12月に入った。
去年の今頃は、母と年賀状を準備した。
私が印刷済の年賀状を買ってきて、母は宛名とメッセージを書く。
私が年賀状の差出しリストを作る。そして、散歩を兼ねて一緒に投函した。
それでも、年賀状を出したかどうか不安になる相手があったようだ。
と思いたいが、年賀状を書いたことも出したことも忘れている。
自分で年賀はがきを買って、また年賀状を書き、投函を頼まれたりした。
私はリストを確認して「こないだ出したんだけど…」と思いながら、
投函せずに持っていた。来年の字と比べようとおもって。
母の故郷も、友達の多くも関東。
遠く離れた大切な人たちに、毎年年賀状を書くのは、母にとって大切な行事。
もうすぐ85歳になる母にとっては、お互いの生存確認の手段でもある。
「来年もこうして、年賀状を出せるといいな。
一緒に家でお正月を迎えられるといいな。」
母は本当にきれいな字を書く。
去年は、宛名の字の大きさのバランスが崩れ始めた。
この一年で、ひらがなの字形が少しずつ崩れてきている。
絵手紙でも、絵の素材をじっくり見たり、字を書く集中力だったりが、
少しずつ短くなっているのを感じている。
母は、
「これが年を取るってことなのね。」
自分が認知症であるとは、思っていない。
集中力に関しては、認知症に関係なく、加齢によってそうなるのだと私も思う。
そんな母は、少し前から、百人一首を素材にした「手習い」をしている。
私が書店で見つけて、買って来た。
半紙に、筆ペンで
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の
富士の高嶺に 雪は降りつつ
とか書いている。しかも、すごい集中力で!
持続する時間は短くなったけれど、話しかけても返事をしないくらい。
がんばっている母は、本当にえらい、と私は思う。
今年も年賀状を買ってきてほしい、と頼まれている。
よかった。今年も一緒に準備できそう。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。